ホンダナビアプリに関するあれこれ

2016年以降のホンダ車のメーカーオプションナビと、2023年以降のディーラーオプションナビ(Gathers)に搭載されているナビアプリのあれこれです。

ホンダナビアプリとは

2016年発売のアコードに設定されたメーカーオプションナビを皮切りに、ホンダのメーカーオプションナビに搭載されるようになったナビアプリです。2023年からはディーラーオプションナビ「Gathers」にも搭載されはじめました。これらのナビはAndroidベースなので、Androidアプリとして開発されています。特に名前はついていないので、本稿では「ホンダナビアプリ」と呼ぶことにします。ちなみに、アプリのパッケージ名はcom.zdc.navigationです。

これまでのホンダ車のメーカーオプションナビは、ナビ本体の製造メーカー1によって異なるナビソフトと地図データを採用していましたが、ホンダナビアプリの導入により、製造メーカーに関係なく統一されたナビソフトと地図データが使用されるようになりました。

ホンダナビアプリの開発元はゼンリンコムデータで、地図データはゼンリンのものを使用しています。地図表示や音声案内は、同じくゼンリンの地図データを採用しているパナソニックやクラリオンのナビに雰囲気が近いです。

搭載されているナビの機種によりバージョンが異なり、筆者は3つのバージョンを確認していますが、どのバージョンも共通の地図データを使用しており、サポート期間の延長やメンテナンス性の向上に寄与しているものと思われます2。本稿では、これらを「Ver.1系」「Ver.3系」「Ver.4系」と称します。

ホンダナビアプリのバージョンごとの差異

ホンダナビアプリのバージョンは、ナビメニュー→情報→バージョン情報→システムバージョンで確認できます。

Ver.1系

2016年発売のフリードのメーカーオプションナビ(ホンダウェブサイトより)

2016年に発売されたアコードのメーカーオプションナビを皮切りに、2020年までの一部メーカーオプションナビや、S660専用のディーラーオプションナビ『VXU-192SSi』にインストールされています。

地図更新はディーラーでのUSBによる更新が必要です。

地図バージョンはVer.21シリーズです。本稿執筆時点で『VXU-192SSi』のみ地図更新のサポートが終了しています3

Ver.3系

ホンダコネクトディスプレイ上で動作するホンダナビアプリ

Honda eに初めて搭載された『ワイドスクリーン ホンダコネクトディスプレイ』を皮切りに、Google搭載モデルを除くすべてのホンダコネクトディスプレイにインストールされています。

Honda e以外のモデルでは、自動地図更新サービスに対応しており、Honda Total Careに加入していればTCU(車載通信機)を通じて地図データが自動的に更新されます。未加入の場合は、ナビに内蔵された地図データのみの利用となります。Honda eのみ自動更新に対応しておらず、ディーラーでのUSBによる更新が必要です。

地図バージョンはHonda eはVer.22シリーズ、Honda e以外はVer.23シリーズです。

発売当初は走行中に再起動する、フリーズする、海の上を走る、地図表示が真っ白になるなど多くのバグが報告されましたが、ソフトウェアアップデートにより改善されています。

Ver.3系で追加された機能

Ver.4系

LXU-237NBi(三菱電機製)で動作するホンダナビアプリ

2023年以降発売のディーラーオプションナビ(Gathers LXUシリーズ)に搭載されています。

地図更新は、自動地図更新サービスに対応している機種と、従来通りディーラーで更新を行う機種の2種類があります。いずれの場合も、使用される地図データは同一です。

踏切案内やオーディオとの2画面表示など、Ver.3系までのホンダナビアプリで不足していた機能が数多く追加され、市販ナビと比べても遜色のないレベルにまで進化しています。

地図バージョンはVer.G01シリーズです。更新情報が掲載されているサイトが同じなので、中身はVer.23シリーズと同等と考えられます。

Ver.4系で追加された機能

気になる仕様など

ナビキャンセラー

ホンダナビアプリは車速パルスからの情報を使って操作制限をかけているので、いわゆる「テレビキャンセラー」(カーナビをパーキングブレーキがかかっていると誤認させる器具)を装着するだけでは走行中のナビ操作が可能になりません。

走行中の目的地設定などの操作を可能にするには、車速パルス信号をカットする「ナビキャンセラー」を装着する必要があります。一般的にはテレビキャンセラーより高価になります。

走行中に一部の道路が消える

縮尺を200mより広域にしている状態で走行中は、細街路が画面上から非表示になり、停車すると再度表示されます。この仕様は、一般社団法人日本自動車工業会(JAMA)が定める『画像表示装置ガイドライン』で定められており、同会に加盟しているメーカーの純正カーナビはすべてこの仕様になっています。

ナビゲーションの地図表示において、市街地の細街路は表示しない。ただし、運転者が注視し続ける必要が生じず、かつ、抜け道探索につながらない以下の場合についてはこの限りでない。
・道路ネットワーク上の重要な道路、経路設定・選択された道路は走行中の表示を可とする。
・縮尺1/20,000より詳細な地図においては、細街路走行中、細街路の表示を可とする。ただし、手動スクロール操作(容易な操作に改良したものを含む)を行った場合は、細街路の表示を禁止する。
・縮尺 1/5,000 および、それより詳細な地図においては、走行中、細街路の表示を可とする。ただし、手動スクロール操作(容易な操作に改良したものを含む)を行った場合は、細街路の表示を禁止する。

一般社団法人日本自動車工業会(JAMA)『画像表示装置の取り扱いについて 改訂第3.0版』、2004年8月18日。

ほかの多くのメーカーのカーナビは、細街路を走行しているときに限り、走行中であっても細街路を表示する仕様になっていることが多いですが、ホンダコネクトディスプレイはその仕様がないので道なき道を走っているような状態になります。

高速走行中に地図が広域になる

約85km/h以上で走行中は市街地図の表示ができません。

これはホンダのメーカーオプションナビ伝統の自主規制ですが、ホンダナビアプリがGathersにも搭載されたことでディーラーオプションナビにも適用されるようになりました。

  1. アルパイン、パイオニア(カロッツェリア)、三菱電機など
  2. 例えば、トヨタのメーカーオプションナビはどの機種も同じナビソフトを使用しており、発売から10年以上経っても地図更新がサポートされている車種も存在します。ナビソフトを統一することは更新期間を伸ばすことにつながると思います。
  3. 「本体地図バージョンアップUSB『21.100.00』をもちまして更新終了とさせていただきます。」